モータートゥーン・グランプリを創った男達

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ここに一冊の漫画がある。

ゲームクリエイターを目指す若者達の福音となるべく書かれた漫画である。

はっきり言って漫画としては良くできている。ドラマツルギーを守って、という意味で。この手の漫画はこれ以外に描き方はないのだ。取材して、固くやって、絵に手間がかかる割に、イマイチ評価されない、報われない仕事である。

幕間に作者が取材がてら、接待を受けて楽しい思いをした事が描かれている。読んで口惜しがっている漫画家を一人知っているが、ここに愚痴だの編集の悪口だのをかく漫画家だっているのだ。それより景気の良い話を描く方がまだ作者の品位があろうというモノである。

 

「スーパーマリオ」をつくる(リアル)宮本茂氏↓

新人とは思えぬリアルな絵だ。おそらくアシスタント経験が豊富か、私が見ていないところで相当描いている人だろう。

下の乃美が描いた宮本茂の似顔絵と比べると、かれの上手さは一目瞭然である。

そーそー、こんな顔だった。思い出したぞ。うーん、リアルだ。

 ←不正確な乃美の似顔絵

本題に入る。

これに収録されている「グランツーリスモを創った〜」が問題なのだ。

長谷川にとって。

漫画は製作スタッフのどん底状態から始まる。

プレステと同時発売した「モータートゥーン・グランプリ」のあまりの評判の悪さに、彼らが落ち込むシーンだ。物語はここから、彼らが次回作「グランツーリスモ」を作ってピークに這い上がるまでが描かれる。

だが、ちょっと待て。

モータートゥーン・グランプリはそんなにクソゲーだったのだろうか。否、そんな事は無い。十分楽しいゲームだった。いや、もっと言おう。当時としては「リッジレーサー」にも負けない傑作だった!

まず設定が素晴らしい。

モーター・トゥーン・ワールドのアニメキャラたちが春先になるとグランプリレースを開く。賞品は現実世界へのパスポートだ。魔法の力で車に変身したキャラクターは世界最速の地位とパスポートを求めて競い合うのだ。

味も素っ気も無い「グランツーリスモ」や「リッジ」や「ワイプアウト」に比べて、なんて夢のある設定でしょう。しかもこの設定はレースにもちゃんと生かされているのだ。コース上にあるダイヤを取ると、天使と悪魔のルーレットが始まり、天使の目が出ると突如、車が人間に戻ってものすごい速さで走り出すのだ。

人間の方が速いのなら、なんでわざわざ車に変身して競っているのかというと、知らん。おまけに天使のカードの操作しにくいこと。ものすごい勢いでコースアウトして、取り返しのつかないことになる。このため悪魔カードが出てホッとするという、極めて逆説的な社会風刺まで含まれているのだ。

モータートゥーングランプリがケチをつけられる要因は「物理法則がヘン」ということだ。車が側壁にぶつかると入射方向にそのまま跳ね返されるのだ。これでは減速どころか逆走になってしまう。そこで走る爽快感を奪われ、みんな「やってられっか」とキレてしまうのだ。

ちがうんだってば。たしかにストレスが溜まる現象ではあるが、これは「高速で壁にぶつかると大惨事になりますよ」ということを教えているのだ。これは「いかに外周にぶつからずに走るかゲーム」なのだ。

 

ヘンな物理法則ならではのコース。垂直のポールだって上ってしまうぞ。

さらに子供でも、というか長谷川でも簡単にボタンひとつ押すだけでドリフトができる「ドリフトボタン」の採用。大方のユーザーには不評だったようだが、長谷川には好評だった。

圧巻はトゥーンアイランドのタイムアタックである。

ここは当然カッコ良くて最高速があって、加速、ハンドリングに劣るペンギンカーをいかに使いこなすかが課題となる。実際長谷川はかなり自信があった。ところが雑誌を見て愕然、信じられない好タイムが並んでいる。しかもハンドリング以外なんの取り柄も無いラプターでだと。じつはこのゲームにはバグがあって、トンネルの壁にラプターを擦りつけると、時速600キロあたりまで加速可能だったのだ。だがその後の機体制御の難しさは半端ではない。この製作者も知らなかったテクニックを発見し、対応できたものだけが最高タイムを競えるという、実に奥の深いゲームなのであった。嗚呼。

話を漫画に戻そう。製作スタッフはレビューとアンケートハガキをみてがっくりである。「ファミ通」みたいな雑誌のレビューが「4、2、3、2」となっているが、これはツクリだろう。いくらなんでも酷すぎる。

だれかが「宣伝サイドが強引にせかすから中途半端な出来になった」とか愚痴る。で、みんなでなんだかんだ言った挙句プロデューサーが反省する。「オレ達が作りたかったのはこんなゲームだったのか」と。

そりゃないよ、山ちゃん。

こんなゲームを「いやー、これ面白いッす」と言っていた俺の立場はどーしてくれるのさ。学研の漫画でプレステ取り上げた時にも「作者はモータートゥーンの大ファン」って描いたんだぜ。

…ドラマツルギーとしては、仕方ないのか。「モータートゥーンはそこそこの人気だった」なんて描いても盛り上がらないもんな。

だがしかし、ここで落ち込んだスタッフが雪辱を晴らしたのは「モータートゥーングランプリ2」ではありませんか。

ところが、この漫画では「モータートゥーングランプリ2」は無かった事になっているのだ。

ががーん。つづく

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